お薬による治療

肺動脈性肺高血圧症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症のお薬について紹介します。

肺動脈性肺高血圧症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療にはどんなお薬があるの?

肺高血圧症の治療には、肺動脈を拡げるお薬(肺血管拡張薬)が用いられます。
肺血管拡張薬は、作用する経路により「エンドセリン経路」、「一酸化窒素経路」、「プロスタサイクリン(PGI2)経路」の3種類に分類されます。一酸化窒素経路には、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬があります。PGI2経路には、PGI2製剤、PGI2誘導体製剤、プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬があります。肺動脈性肺高血圧症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療に用いられるお薬は、下表記載のとおりです。

内服のお薬
肺動脈性
肺高血圧症
慢性血栓
塞栓性
肺高血圧症
エンドセリン受容体拮抗薬:
マシテンタン、ボセンタン、アンブリセンタン

血管で産生されるエンドセリンという物質は強力な血管収縮作用を示します。また、エンドセリンには血管の細胞を増やすなどの働きもあります。このお薬はエンドセリンの働きを妨げることで肺の血管を拡げるお薬です。

肺動脈性肺高血圧症 慢性血栓肝塞栓性
肺高血圧症
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ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬:
タダラフィル、シルデナフィル

血管は自身から作られる物質によって、血管収縮と拡張のバランスを保っています。PDE5と呼ばれる酵素は、血管拡張物質であるサイクリックGMPを分解する働きがあります。PDE5阻害薬は、肺の血管に多く存在するPDE5の働きを妨げることで血管を拡げるお薬です。

肺動脈性肺高血圧症 慢性血栓肝塞栓性
肺高血圧症
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可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬:
リオシグアト

グアニル酸シクラーゼはサイクリックGMPを産生する酵素です。
このお薬はグアニル酸シクラーゼを活性化し、サイクリックGMPの産生を増やして肺の血管を拡げます。

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肺高血圧症
プロスタサイクリン(PGI2)誘導体製剤:
ベラプロストナトリウム

このお薬は体内のプロスタサイクリンと同様の作用を持つお薬です。
プロスタサイクリンは肺の血管を拡げる作用と血液を固まりにくくする作用によって、肺動脈圧を下げ、血液を流れやすくします。またプロスタサイクリンには血管内側の細胞が増えすぎるのを防ぐ効果があると言われています。

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肺高血圧症
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プロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬:
セレキシパグ

血管拡張物質であるプロスタサイクリンと違う構造でありながら、プロスタサイクリンと同様の作用で肺の血管を拡げる経口のお薬です。
段階的に投与量を上げていき、患者さんごとの適量で治療を継続します。


セレキシパグ(製品名:ウプトラビ®)の
患者さん向け製品情報サイトはこちら

肺動脈性肺高血圧症 慢性血栓肝塞栓性
肺高血圧症
注射のお薬
肺動脈性
肺高血圧症
慢性血栓
塞栓性
肺高血圧症
プロスタサイクリン(PGI2)製剤:
エポプロステノール
プロスタサイクリンそのものを静脈内に注入して血管拡張を促すお薬です。このお薬は体内に入ると数分で分解されてしまうため、静脈内にカテーテルを挿入し、携帯用ポンプによりお薬を24時間持続的に体内に注入します。
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肺高血圧症
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プロスタサイクリン(PGI2)誘導体製剤:
トレプロスチニル
このお薬は静脈内に注入する以外に、皮下に注入することも可能なタイプのプロスタサイクリン誘導体製剤です。皮下あるいは静脈内にカテーテルを留置して携帯用ポンプによりお薬を24時間持続的に注入します。
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肺高血圧症
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吸入のお薬
肺動脈性
肺高血圧症
慢性血栓
塞栓性
肺高血圧症
プロスタサイクリン(PGI2)誘導体製剤:
イロプロスト
このお薬は吸入なので肺に直接届けられます。1日複数回に分けて吸入します。
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肺高血圧症
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肺動脈性肺高血圧症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療ではお薬を併用することもあります

お薬による治療には1つの薬剤で行う場合と複数の薬剤を併用する場合があります。併用治療には効果などを確認しながら1つずつ間隔をあけてお薬を追加する場合と、治療開始初期から複数のお薬を間隔を殆どあけずに併用する場合があります。患者さんの状態などを考慮し、医師が最善の治療方針を決定します。

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