ドクターズボイス 波多野将先生
肺動脈性肺高血圧症や慢性血栓塞栓性肺高血圧症などの患者さんへ、専門医からのメッセージを動画で紹介します。
東京大学大学院医学系研究科 重症心不全治療開発講座 特任准教授 波多野 将 先生
*先生のご所属は撮影時のものとなります。
強皮症と肺高血圧症について
- メッセージをテキストで紹介しています
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- Q.数年前から強皮症の治療を受けています。今回「肺高血圧という病気を合併した」と診断を受けました。
聞き慣れない病名ですが、どのような病気でしょうか? - A.肺高血圧症とは肺動脈内の圧力が上昇してしまう病気です。
肺動脈の圧力は通常全身の血圧の1/6程度ですが、これが何らかの原因によって上昇してしまうことにより起こります。
こちらが、肺動脈が一度毛細血管に分かれて肺で酸素を取り入れ、再び一つになって左心室に流れ込んでいくことを表した模式図です。
肺高血圧症は、 肺動脈そのものが狭くなっても起こりますが、道路の渋滞が手前に延びていくのと同様に、より下流側の、肺そのものや左心室の方に問題が生じた場合でも肺高血圧を生じます。
強皮症の患者さんに生じる肺高血圧の多くは、肺動脈そのものが狭くなる、肺動脈性肺高血圧症と呼ばれるものです。
しかしながら、間質性肺炎や左心室の方の問題などによって肺高血圧になる方もいらっしゃいますので、ご自身の肺高血圧の原因については担当の先生によくご確認下さい。
- Q.強皮症の治療に加えて、肺高血圧の治療も受けるのでしょうか?どのような治療になりますか?
- A.ここでは強皮症の患者さんに最も生じることの多い、肺動脈性肺高血圧症の治療についてご説明します。
肺の血管を拡げる薬を用いて治療を受けることになるわけですが、このようなお薬は現在10種類以上が使用可能です。
症状の軽い方はまずは1つの薬で治療を始めますが、中等度以上の症状のある方は初めから2種類以上の薬を組み合わせて使用することもあります。
さらには、肺高血圧の薬には、持続的に静脈に注射をする薬や、持続的に皮下注射をする薬もありますので、重症の方にはそのような薬を使用することもあります。
その時点での治療効果が十分であるかを評価するため、定期的に検査を行うことも重要です。
- 専門医から患者さんへのメッセージ
- 肺高血圧症はこれまで非常に予後が悪い病気と言われていましたが、最近では治療が大きく進歩したため、早期から積極的な治療を行えば、症状が悪化しないどころか大きく改善することも期待できます。
いたずらに不安に思うことなく、積極的に治療に取り組んで行って下さい。
- Q.数年前から強皮症の治療を受けています。今回「肺高血圧という病気を合併した」と診断を受けました。
強皮症に伴って発症することがある肺高血圧症に関する症状や検査、治療について、詳しい情報を提供するサイト「知ってる?強皮症の合併症 息切れとPH」も運営していますので、宜しければご覧ください。