ドクターズボイス 大郷剛先生
肺動脈性肺高血圧症や慢性血栓塞栓性肺高血圧症などの患者さんへ、専門医からのメッセージを動画で紹介します。
国立循環器病研究センター 肺高血圧症先端医学研究部 特任部長
心臓血管内科部門 肺循環科 医長 大郷 剛 先生
*先生のご所属は撮影時のものとなります。
慢性血栓塞栓性肺高血圧症の病態と治療について
- メッセージをテキストで紹介しています
-
- Q. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)という診断を受けました。
聞き慣れない病名ですがどのような病気なのでしょうか? - A.慢性血栓塞栓性肺高血圧症の病気についてご説明いたします。
皆さんはエコノミークラス症候群という病気をご存知でしょうか。
この病気は、足の静脈に血栓ができその血栓が肺に飛んでしまい、息苦しいといったような(時には命に関わる)急な症状を起こす病気です。
通常こういった急な血栓は、溶けてしまいます。
ところがこの肺に飛んだ血栓、もしくは肺にできた血栓が、そのまま残ってしまい、慢性化してしまう場合があります。
このようになると、肺の血栓が残っていることで、血液の流れが悪くなってしまいます。
血液の流れが悪くなった状態で、肺の血管に非常に負担がかかり、圧力が上がってしまう状態になることがあります。
この肺の血管の圧力が上がった状態を肺高血圧症と呼んでいます。
この慢性の血栓による閉塞、それと肺の高血圧、この二つの状態が重なった状態を、慢性血栓塞栓性肺高血圧症と呼んでいます。
問題は肺の血管がつまり、肺の圧力が上がっていることで、心臓に負担がかかってしまいますので、通常の生活で、息切れ・だるさといったような症状が起き、日常生活に非常に大きい影響を与えることがあります。
そして治療されずにしだいに悪化してしまうと、命に関わってしまうといったことが起こってきます。
- Q. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療では、どのような治療を受けるのでしょうか?
- A.では慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療についてご説明いたします。
現在、この病気に対して三つの治療が行われております。
肺の血管に血栓がつまっているという状態がありますので、まず、最初の治療として手術が行われます。
肺動脈の中に血栓がつまっていますので、それを取ってくるために、開胸して肺の血管の中から、血栓を取ってくるといった治療です。
この治療は、手術をするという大きな心象はありますけれども、非常に改善して患者さんの状態は良くなります。
もう一つの治療は、肺動脈のカテーテル治療です。
この治療は、カテーテルという細い管を肺の血管に持って行って、風船で肺の血管がつまっているところを拡げるということで、肺の血流が改善して、患者さんの病態が良くなります。
もう一つの治療は、飲み薬です。
この飲み薬の治療は、血栓を取ってくるわけではありませんので、完全に治すという治療ではありませんけれども、患者さんの症状であったり、それから肺高血圧であったり、心不全症状であったり、そういったものが非常に良く改善します。
ただこの三つの治療は、患者さんの病態に合わせて、選択しますので、よく担当の先生とご相談いただいて、選択することになります。
- 専門医から患者さんへのメッセージ
- 今このビデオを見ていらっしゃる方は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症で、お困りになっていると思います。
ただこの病気は治る病気です。
この病気で、手術、カテーテル治療、そして内服、こういった治療を受けて、今元気に生活されている方は、非常にたくさんおられます。
ただ一番大事なことは、きちんと診断を受けることです。
この病気が分からなければ、治療を受けることができません。
きちっと受診して、この病気の診断をしていただき、そして次に大事なことは、この肺高血圧症の治療を受けることです。
ただ、この慢性血栓塞栓性肺高血圧症の治療をできる施設というのは、限られております。
担当の先生とよく相談し、こういった専門の治療を受けていただくことをお勧めいたします。
- Q. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)という診断を受けました。